2009年に厚生労働省から発表された調査結果で、日本の成人男性の約10%、女性の約2%がギャンブル依存症ということが判明しました。
人口に置き換えると日本人の約560万人がギャンブル依存症ということになりますが、そもそもギャンブル依存者と非依存者の心理状態はどう違うのでしょうか?
ドーパミンが関係しているという話はよく耳にすると思いますが、さらに掘り下げてギャンブルをやめられない決定的な理由を探っていきましょう。
目次
ギャンブルにおけるアンカリング効果
アンカリング効果というのは、はじめに印象に残った出来事がその後の判断に影響する基準となること。
ギャンブルに置き換えた場合は、大当たりを的中させていい思いをした経験が基準になり、
「次はもっと大勝ちしてやる!」
という、ギャンブルをしていない人からすれば考えられないような心理になるんです。
繰り返し刺激を求める
ギャンブルで勝った体験というのは強烈に記憶に残り、その刺激を求めて何度もギャンブルをします。
ギャンブル以外に譲れないような趣味があれば別ですが、そうでない場合はゲームやスポーツでの快感をあまり感じられなくなり、次第にギャンブルにだけ反応する脳に作り変えられていきます。
ギャンブルをするとドーパミンが止まらない、といった話を聞いたことがあるかもしれませんが、ドーパミンというのは快感を司るホルモンのことです。
ギャンブル依存症になると、ギャンブル以外でドーパミンが出づらくなるので、ギャンブル以外のことをしても楽しさを感じられず、
「今日は負けたから、明日は絶対に勝ちに行く」
「今日はちょい勝ちだったから、明日は大勝ちするぞ!」
といった心理状態に陥っていきます。
ねずみを使った実験
連続的な刺激に関して、ねずみを使った興味深い実験があるので紹介します。
まず、ねずみを檻の中に入れて、電気的な刺激を断続的に与えます。
そして、檻からねずみを出してやると、ねずみはどうすると思いますか・・・?
なんと、ねずみはその檻に戻っていくんです!
「人間とねずみを比較しても・・・」という意見もあるかと思いますが、この実験からは生き物は刺激がストレスでありつつも、刺激を繰り返し受けたがる傾向があることが分かりますね。
ギャンブルの負けはギャンブルで取り返す
非依存者であれば、ギャンブルで負けが続けばしばらくはギャンブルをするのを控えるでしょう。
しかし、ギャンブル依存者の記憶には、大負けした後に大勝ちしてドーパミンが止まらない経験が刻まれているので、さらにリスクの高いギャンブルを求めて、
「ギャンブルで負けた分はギャンブルで取り返そう」
という心理が働きます。
先ほどアンカリング効果の話をしましたが、大勝ちする度に基準が上書きされていくのも厄介なところ。
基準が上書きされると前の基準では快感が得られなくなるので、より多くの快感を求めてリスクを伴うギャンブルに依存するようになるんです。
人間は得たものを失うことを恐れる生き物
さらに、元々人間というのは【得ること】よりも【得たものを失うこと】を恐れる性質もあるため、一度ギャンブルで負けてしまうとギャンブルで得たお金が惜しくて、勝ち分を取り返すためにギャンブルをやめることができなくなります。
実際、
「ギャンブルをやめようと思えばいつでもやめられる」
と口では言っているものの、
「負け分を取り戻すまではギャンブルをやめられない、ここでやめたら負けを認めることになる」
といった心理状態に陥り、負の連鎖から逃れられないギャンブル依存者が非常に多いです。
借金をしてまで続ける
ここまでの説明を読めば、ギャンブル依存者が借金をしてまでギャンブルを続ける理由は何となく分かるのではないでしょうか?
普通の心理状態であれば、借金をしてまでギャンブルをしようという人間はいません。
つまり、そこで踏みとどまることができている人間はギャンブル依存症ではなく、ギャンブル依存症予備軍です。
本当のギャンブル依存者は、お金が無くても快感を求めて借金をしてまでギャンブルをしますし、借金が増え続けていく状況でも、
「ギャンブルで大勝ちしてしまえば、今までの借金はチャラになる」
と本気で考えています。
本人には自覚がない
さらに悪いことに、ギャンブル依存者は自分がギャンブル依存症だという自覚がありません。
そして、自分の考えを否定されることを極端に嫌うため、周りの人間が忠告をしても一切聞く耳を持たず、行動がどんどんエスカレートしていきます。
その結果、失職したり離婚したり、最悪の場合は命に関わるような悲惨な出来事が起こってしまうワケですね。
また、ギャンブル依存症の背景には、ほとんどのケースで共依存者が関わっています。
共依存者とはギャンブル依存者の借金を肩代わりしたりする家族や友人のことなどを指しますが、本人を助けたいという心理は分からなくもないですが、ギャンブル依存者にとっては逆効果。
ギャンブル依存症を治すには、本人がギャンブル依存症ということを自覚した上で、医療機関や回復施設で治療を受け、家族は専門家の意見を聞きながら見守り続けていくことが重要です。